映画『ミッドナイトスワン』を見て・・・
映画、ミッドナイトスワンを見てきました。
割引等のない金曜日。朝一番の回でしたが8割は席が埋まっている状況。
先入観なしで映画の世界に浸りたいので前情報はCMで見ただけ。
とにかく、泣ける
ということは聞いていたのでタオルハンカチ持参で臨みました。
新宿のとあるショーパブで働くトランスジェンダーの凪沙(草彅剛)は、故郷広島の家族には
そのことを告げずに世間の心ない言葉に傷ついたり、身体の変調に苦しんだり経済的に厳しい中ながらも必死に暮らしていた。
そんなある日、母親の早織(水川あさみ)から育児放棄されている親戚の娘一果(服部樹咲)を預かることに。
最初は渋々だった凪沙だが、一果のバレエの才能を垣間見たのをきっかけに、ある決意をする。
というストーリー。
始まってすぐに、
あら、不思議。
草彅さんの声のトーンが凪沙。
髪を切って、外見がそれまでと変わるシーンがあるけど、
声のトーンはそのままで、まったく違和感がない。
物語が進むうちにそれぞれの人物の
思い通りにいかない気持ちにすっかり感情移入。
一果と同じバレエ教室で友達となるりんの気持ち、
(自分のレベルを客観視しつつ、だと一果のような才能をまざまざと見せつけられるのはつらい。でも、そんなに意地悪じゃなくてよかった。ビルの屋上で踊っていてそのまま空を舞って行ってしまったのにはびっくりしたけど。)
バレエ教室の先生である片平実花の
逸材を発掘してほかの生徒を置いてけぼりにしてどんどん指導にのめりこむ感じ。
早織の、本当はちゃんとしたいのに…といった気持ち。娘が取られそうな焦り。
(ちゃんとしたいけど、できないことってあるのよ。。。)
凪沙のタイや実家へ向かうときの気持ち。
うまくいかなくって、ずるずるとやらないといけないことを後回しにしてルーズになってしまう気持ち。(ここでは、術後のケアをおろそかにしてしまった。)
凪沙の友人瑞貴のわかってるけど、とめられなくて落ちていってしまう感じ。
感情の動きとか、人生がままならないとか
環境とか、
これって誰にでも
大小の差こそあれ、生きていくうちにぶつかることだよなあって思ったり。
ある一人の人間の物語として
とても興味深い映画だと感じました。
一番印象に残っているのは、
凪沙のリクエストで一果と一緒に海に行くシーン。
ちょうど、凪沙が海を眺める目線の高さが
映画館で見ている私の座席の高さとちょうどシンクロして
一瞬、私も浜辺で海を眺めているような感覚に陥ってまう。
凪沙が浜辺で息を引き取ったことを知って、
一果が寄せる波も気にせずにどんどん沖へ歩いていく。
ここに音楽が畳みかけるように流れていて、
一果は決して声を上げることはないんだけど。
その感情が見ているこちら側に
わあって広がって。
涙が止まらなくなってしまい、嗚咽を必死でこらえました。
せっかく会えたのに、『別れ』なんて。
中学生の一果にとってなんてつらいんだ。
これを乗り越えるのはあまりに残酷だなあ
と思いました。
未成年のこどもにとって、環境ってどうにもならないのよね。親の保護下に置かれている。よい環境ならいいけど。まず、そこから離れるにしてもお金が必要だし。
海外で前を向く一果の姿で終わったので
希望がある終わりだったけど、
いろいろな感情がないまぜになって思わず自分の10代のころを思い出してしまった。